旅館の倒産について

文責:弁護士 上田佳孝

最終更新日:2023年11月17日

1 旅館の倒産原因

 旅館等の宿泊業界は、新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けた業界です。

 令和2年に新型コロナウイルス感染症の蔓延が始まった頃は、いわゆるゼロゼロ融資でしのいできたものの、元金の返済が始まり、宿泊客もコロナ以前までは戻らないとすると、資金繰りが難しくなるところが多いようです。

 また、定期的に改築や設備投資が必要になる業態なので、新型コロナウイルス感染症蔓延前に既に多くの債務を抱えており、事業を続けても約束どおり返済できるほどの利益が生み出せないケースが珍しくありません。

2 倒産手続の内容

 倒産には、破産、民事再生といった法的整理や、手形不渡りや夜逃げ等で事業が終わってしまう場合も含みます。

 旅館は、夜逃げ等で何の説明もなく廃業すると、大きな混乱を引き起こす可能性が高いです。

 廃業して借金が払いきれないなら、弁護士に依頼して会社破産をするのが一般的です。

 借金全額は払いきれないが、事業を継続できるだけの利益がある場合は、民事再生をすることも多いです。

 ここでは、弁護士が入って旅館の自己破産する場合の特徴をお伝えします。

3 宿泊客対応

 旅館は、日々宿泊客が大勢訪れますから、ある日突然事業が終わってしまうと、宿泊客が泊まるところがなくなってしまうという問題があります。

 しかし、倒産する場合は、仕入代や従業員の給料も払えなくなっていることがあるので、事前に告知すると厳しい取り立てにあったり、従業員が仕事をしないこともありえます。

 事前にホームページを通じて告知するのか、個別に電話をするのか、当日貼り紙等をするだけにするのか等検討することになります。

4 従業員対応

 旅館は、相当数の従業員が勤務しているはずですが、倒産となると給料がもらえるか不安が生じ、仕事をしなくなるおそれがあります。

 従業員にいつ告知するか、給料は払えると約束して問題ないか検討する必要があります。

 未払いの給料が残る場合は、独立行政法人福祉医療機構が給料のおおむね80%まで立て替えて払う制度もありますので、利用方法を説明することもあります。

5 旅館の倒産を検討する場合は早めに弁護士に相談を

 旅館の資金繰りに困っている場合、どのような方針を取るにせよ、早めに弁護士に相談することで選択肢が広がります。

 早く相談すれば事業が継続できたはずが、相談が遅かったことで廃業せざるをえなくなるケースもめずらしくありません。

 すぐに倒産しない場合でも、早めに弁護士に相談するのがよいでしょう。

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